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2026/09/05 12:39 ~ なし
花屋の業務を「言葉」から「データ」へ
SEIVA開発の現在地と、その先の構想
現在、マルイチでは「SEIVA(セーヴァ)」というAIシステムを開発しています。
正式名称は、
Semantic Enterprise Intelligence & Verification Assistant
日本語のニュアンスでは、
**「意味理解・業務知識・検証を統合した業務支援AI」**です。
AIと聞くと、人間と自由に会話をしながら、さまざまな仕事を自動的にこなしてくれる存在を想像する人も多いと思います。
しかし、現在開発しているセーヴァは、いわゆる完全対話型のAIではありません。
セーヴァの中心的な役割は、人間が自然な言葉で入力した内容を一方向に理解し、業務システムで使用できる情報へ整理することです。
人間とAIが長い会話を続けることが目的ではなく、
人間の自然言語
→ セーヴァが意味を理解
→ 必要な情報を抽出
→ 業務データとして整理
→ 既存システムへつなぐ
という処理を、できるだけ正確に行うためのシステムです。
現在は、主に次の三つを実用レベルまで高めるため、改善と検証を繰り返しています。
- スケジュールの管理
- 業務進捗の確認
- オーダー入力の簡略化
売上管理や請求業務、経営分析まで、すでにセーヴァが担当しているわけではありません。
それらは、現在の基本機能を正確に動かせるようになった先で実装したい将来構想です。
今回は、セーヴァがどのような考え方で作られているのか、現在どこまで進んでいるのか、そして店舗に常駐することで将来何が可能になるのかを書いてみたいと思います。
SEIVAという名前に込めた意味
SEIVAを構成する五つの単語には、それぞれシステムの役割を表す意味があります。
Semantic(意味理解)
入力された文章を、単語が一致しているかどうかだけで判断するのではなく、文章全体の意味から理解します。
たとえば、
「今日まだ終わっていない注文」
「本日未完了の仕事」
「今日の残り」
「まだ作っていない商品」
これらは文字としては違いますが、状況によっては同じ情報を求めています。
こうした言い方の違いを、業務上の意味として理解する部分です。
Enterprise(業務)
一般的な質問へ答えるためのAIではなく、マルイチの実際の業務で使用することを前提としています。
花屋には、商品、用途、制作、配達、葬儀、法要、受け渡し時間など、花屋特有の情報があります。
一般的な日本語だけではなく、マルイチの業務内容を理解する必要があります。
Intelligence(情報の理解と整理)
文章の中から、何が商品で、何が金額で、何が日時で、どこがお届け先なのかを判断します。
入力された文章をそのまま保存するのではなく、業務に必要な情報を分類する役割です。
Verification(検証)
AIが読み取った内容に間違いがないか、不足している情報はないか、曖昧な内容を勝手に確定していないかを確認します。
業務で使用する以上、「おそらく合っている」では不十分です。
Assistant(支援)
人間の代わりに勝手に判断するのではなく、人間が行う入力、確認、情報整理を支援します。
つまりセーヴァは、自由に考えて仕事を進めるAIではありません。
人間の言葉と、マルイチの業務システムをつなぐためのAIです。
なぜ「言葉」を業務データへ変換するのか
マルイチではこれまで、受注管理、請求書作成、売上管理、納品管理、送料計算、斎場検索など、実際の業務に合わせて複数のシステムを作ってきました。
これらのシステムによって、以前は紙や人の記憶に頼っていた情報を、データとして管理できるようになりました。
ただし、従来の業務システムには一つの前提があります。
それは、人間がシステムの構造を理解し、必要な情報を決められた入力欄へ登録することです。
オーダーを登録する場合も、商品、数量、予算、用途、色合い、日時、お届け先、注文主、電話番号、支払い方法などを、人間が確認しながら各項目へ入力します。
正確に管理するためには必要な作業ですが、入力する側は「どの情報を、どの欄へ入れるのか」を理解していなければなりません。
つまり、これまでのシステムでは、人間のほうがシステムの形式に合わせる必要がありました。
セーヴァでは、この関係を変えようとしています。
人間が普段使っている言葉で内容を入力し、セーヴァがその意味を理解して、既存システムで扱える形式へ変換する。
人間が最初から情報を一つずつ分解するのではなく、人間がまとめて伝えた内容を、セーヴァが業務情報へ分解して整理するという考え方です。
「言語理解」とは、文章をデータへ変えること
たとえば、次のような注文があったとします。
「明日の午前10時に、白石区の○○様へ、5,000円のピンク系アレンジメントを配達」
人間が読めば、おおよその注文内容はすぐに理解できます。
しかし、コンピューターで注文を管理するためには、この文章をそのまま保存するだけでは不十分です。
文章の中から、
- 「明日」=配達日
- 「午前10時」=配達希望時間
- 「白石区の○○様」=お届け先
- 「5,000円」=商品予算
- 「ピンク系」=希望する色合い
- 「アレンジメント」=商品種別
- 「配達」=受け渡し方法
というように、情報を一つずつ分ける必要があります。
このように、文章の中から意味のある情報を取り出し、決められた項目へ振り分ける処理を、専門的には「意味解析」や「構造化」と呼びます。
簡単に言えば、人間の言葉を、業務システムが理解できる形へ翻訳する作業です。
セーヴァは、この翻訳を行う役割を持っています。
人間の言葉は、毎回同じ形ではない
自然言語を業務で扱う難しさは、人間が毎回同じ言葉や順番で話すとは限らないことです。
たとえば、
「10時に配達」
「午前中に届ける」
「葬儀が11時なので、その前に納品」
「明日一番で持っていく」
「お昼までにお願いします」
これらはすべて時間に関係する情報ですが、意味は同じではありません。
「10時」は具体的な時刻です。
「午前中」は時間の範囲です。
「葬儀が11時」は行事の開始時刻であり、実際に商品を届ける時間とは別に考える必要があります。
「その前に納品」には、どれくらい前なのかという曖昧さがあります。
「明日一番」も、人によって想像する時間が違う可能性があります。
人間同士であれば、周囲の状況や経験から意味を推測できます。
しかし、業務システムでは、これらを同じ時刻として処理すると、配達遅れや確認漏れにつながります。
そのためセーヴァには、文章を理解するだけでなく、確定している情報と、まだ確定していない情報を区別することが求められます。
分からないことを、勝手に決めない
一般的なAIは、文章全体の流れから「おそらくこういう意味だろう」と推測することが得意です。
しかし、業務では、その推測が危険になる場合があります。
たとえば、
「明日の午前中にアレンジを配達」
という入力には、複数の情報が不足しています。
予算はいくらなのか。
誰に届けるのか。
住所はどこなのか。
色合いは決まっているのか。
午前中の何時頃なのか。
これらを、AIが勝手に想像して登録してはいけません。
そのため、セーヴァでは入力された情報を、
- 明確に確定できる情報
- 範囲までは分かる情報
- 複数の意味に取れる情報
- まだ選択されていない情報
- 完全に不足している情報
に分けて考える必要があります。
たとえば「午前中」は、時間がまったく分からないわけではありませんが、正確な時刻でもありません。
これを勝手に午前10時と確定するのではなく、「午前中という範囲の指定」として扱う必要があります。
分からない情報を勝手に補わず、分からない状態のまま正しく管理すること。
これも業務用AIには必要な能力です。
AIに任せる部分と、コードで確定する部分
セーヴァでは、すべての処理をAIの判断だけに任せるのではなく、AIが担当する部分と、従来のプログラムが担当する部分を分けて考えています。
AIが得意なのは、言い方の違いを理解することです。
「残っている仕事」
「未完了の注文」
「まだ終わっていないもの」
こうした表現を、同じ目的の入力として理解することはAIの得意分野です。
一方で、注文番号の完全一致、日付の計算、件数の集計、金額、税金、送料などは、決められたルールに従ってプログラムで処理したほうが正確です。
つまり、
言葉の意味を理解する部分はAI
数字や確定情報を処理する部分はコード
という役割分担です。
AIの柔軟さと、従来型システムの厳密さを組み合わせることで、自然な言葉を扱いながら、業務に必要な正確性を保とうとしています。
SEIVAの正式名称に「Verification=検証」が入っているのも、この考え方があるためです。
現在取り組んでいる三つの機能
現在は、対象範囲を無理に広げず、店舗業務の基本となる三つの機能を正確にすることへ集中しています。
1.スケジュールの管理
一つの注文には、複数の日付や時間が関係する場合があります。
注文を受けた日、商品を制作する日、店頭でお渡しする時間、配達時間、葬儀や法要の開始時間などです。
これらをすべて同じ「予定」として扱うと、何のための時間なのか分からなくなります。
セーヴァでは、入力された言葉から時間の意味を読み取り、
「いつまでに作るのか」
「いつお客様へ渡すのか」
「いつ配達するのか」
「行事は何時に始まるのか」
を区別して整理できるよう改善しています。
目標は、単なるカレンダー表示ではありません。
その日の店舗業務として、何を、いつまでに行う必要があるのかを正しく把握できるスケジュール管理です。
2.業務進捗の確認
スケジュールが登録されていても、予定を見るだけでは現在の状況は分かりません。
どの商品が完成しているのか。
何が未完成なのか。
配達は完了したのか。
今日の仕事はあと何件残っているのか。
こうした進捗を、実際の注文データから確認できるようにしています。
ここで難しいのは、「今日受けた注文数」と「今日行う仕事の数」は同じではないという点です。
今日受けた注文でも、お渡しが来週なら、今日の作業とは限りません。
逆に、数日前に受けた注文でも、お渡しや配達が今日なら、本日の重要な予定です。
そのため、単純に登録日だけを数えるのではなく、制作日、配達日、受け渡し時間、完了状態などを組み合わせて判断する必要があります。
実際には未完了の仕事が2件あるのに「残り0件」と表示されれば、業務システムとしては使えません。
現在は、こうした件数や進捗状態を正しく判定できるよう、実際の業務データを使いながら改善しています。
3.オーダー入力の簡略化
三つ目は、自然な文章から注文内容を読み取り、必要な項目へ整理する機能です。
現在の受注システムでは、人間が入力画面を開き、複数の項目へ情報を登録します。
セーヴァでは、その前段階を簡略化します。
人間が注文内容を文章や音声でまとめて入力し、セーヴァが日付、商品、予算、用途、配達先などへ分解する。
そして、その結果を既存の受注システムで扱える形へ変換する。
これによって、入力担当者が画面上の項目を一つずつ探す負担を減らせます。
ただし、入力を簡単にすることと、AIへすべてを任せることは同じではありません。
セーヴァが整理した結果に不足や曖昧さがあれば、その状態を明確にする必要があります。
必要な情報がそろっていることを確認したうえで、既存システムの正式な処理へ渡す。
この安全性を維持しながら入力を簡略化することが重要です。
完全対話型ではなく、単方向の言語理解が中心
ここは、セーヴァの性格を理解するうえで重要な部分です。
現在のセーヴァは、人間と雑談をしたり、長い相談を続けたりすることを中心に作っているわけではありません。
基本となるのは、
人間が業務内容を入力する
→ セーヴァが意味を理解する
→ 情報を整理する
→ 処理結果を表示する
という単方向の流れです。
不足している項目を確認しなければならない場合はありますが、AIとの会話そのものを続けることが目的ではありません。
セーヴァは「話し相手」ではなく、自然言語を業務データへ変換するための操作窓口です。
通常のコンピューターでは、人間がボタン、メニュー、入力欄を操作します。
セーヴァでは、その一部を人間の言葉で操作できるようにします。
言葉によってシステムを扱えるようにすることが中心であり、人間のような人格を持ったスタッフを作ることが目的ではありません。
現在は、実際の業務から間違いを見つける段階
自然言語の理解は、机上のテストだけでは完成しません。
実際の店舗では、人によって言い方が違います。
文章が途中で省略されることもあれば、複数の注文をまとめて入力することもあります。
音声入力では、花屋特有の言葉が別の言葉として認識されることもあります。
たとえば「未完了」が別の言葉として認識されれば、セーヴァは正しい処理へ進めません。
また、文章の意味を正しく理解できても、完了件数を集計する条件が間違っていれば、最終的な結果は不正確になります。
問題が発生する場所は、AIの部分だけではありません。
- 音声を文字へ変換する部分
- 文章の意味を理解する部分
- 情報を項目へ分ける部分
- 既存データを検索する部分
- 件数や状態を計算する部分
- 結果を画面へ表示する部分
どこか一つでも間違えば、利用者から見れば「セーヴァが間違えた」ということになります。
現在は、実際の業務で入力し、結果を確認し、原因を特定して修正し、もう一度試すという作業を繰り返しています。
機能を一気に増やす段階ではなく、基本機能を正確に動かすための土台を作っている段階です。
既存システムの“上位”とはどういう意味か
マルイチには、すでに複数の業務システムがあります。
受注管理には注文の情報があります。
売上管理には売上の情報があります。
請求システムには請求に必要な情報があります。
送料計算や斎場検索にも、それぞれのルールとデータがあります。
これらは、各業務の正式な情報を管理する土台です。
専門的には、正式なデータを保持するシステムを「System of Record」と呼ぶことがあります。
簡単に言えば、何が正しい情報なのかを最終的に管理している場所です。
セーヴァは、この土台を勝手に置き換えるものではありません。
既存システムが持っているデータと計算方法を生かし、その上で人間の言葉を理解する層として配置します。
構造としては、
人間の言葉
↓
SEIVA:意味理解・情報整理・検証
↓
既存システム:保存・検索・計算・正式処理
という関係です。
これが、セーヴァを既存システムの“上位”に置くという意味です。
上位だから、下にあるすべての仕事をセーヴァが代わりに行うわけではありません。
セーヴァは、人間が伝えた内容を理解し、どの情報として扱うべきかを整理し、適切な既存システムへつなぎます。
たとえるなら、既存システムがそれぞれの業務を担当する専門部署で、セーヴァは人間から受け取った情報を整理して、正しい部署へ渡す受付のような役割です。
現在、売上管理や請求業務は行っていない
将来的には、売上管理や請求業務など、より広い範囲との連携も検討しています。
しかし、現時点でセーヴァが売上を管理したり、請求処理を行ったりしているわけではありません。
現在の対象は、スケジュール管理、業務進捗の確認、オーダー入力の簡略化です。
まずは受注に関係する情報を正しく理解し、整理し、既存システムへつなぐことを優先しています。
この部分が不正確なまま、売上、請求、仕入れなどへ対象を広げても、システム全体が複雑になるだけです。
そのため、現在は意図的に範囲を絞っています。
基本となる言語理解と情報整理の精度を高めたうえで、その仕組みをほかの業務へ広げていく考えです。
店舗に常駐すると、何が変わるのか
将来的には、セーヴァを店舗内で常時起動し、必要なときに自然な言葉で業務情報を入力できる状態を目指しています。
これは、AIが店舗の中で勝手に考え続けるという意味ではありません。
人間が必要とした瞬間に、言葉を使って業務システムへ情報を渡せる状態です。
たとえば、注文を受けたときに内容をまとめて入力する。
セーヴァが注文内容を必要項目へ分ける。
登録された予定から、その日に必要な作業を整理する。
現在の進捗から、まだ完了していない仕事を表示する。
パソコンの画面を何度も切り替えたり、複数の入力欄を一つずつ操作したりする代わりに、自然な言葉を業務システムへの入口として使えるようになります。
特に花屋では、花を束ねている、配達準備をしているなど、キーボードやマウスを操作しにくい場面があります。
文章入力だけでなく、音声入力の精度も高められれば、作業を大きく止めずに情報を入力・確認できる可能性があります。
その先にある将来構想
スケジュール管理、進捗確認、オーダー入力の簡略化が実用レベルに達した後は、同じ仕組みをほかの業務へ広げることができます。
将来的には、
- 売上データの確認
- 請求対象となる注文の整理
- 仕入れと売上の比較
- 店舗間の注文・進捗共有
- 送料や箱代の計算
- 斎場情報や持込料の確認
- 季節行事に合わせた業務準備
- 前年実績との比較
といった既存システムの情報も、自然な言葉から扱える可能性があります。
ただし、これらは現在すべて実装されている機能ではありません。
あくまで、現在開発している「言葉を理解し、業務情報へ整理する仕組み」を応用した先にある将来構想です。
対象となる業務が増えるほど、確認しなければならないルールや安全性も増えます。
一つずつ既存システムと接続し、正しく処理できることを確認しながら広げる必要があります。
人間を置き換えるのではなく、入力方法を変える
セーヴァが目指しているのは、人間の代わりに花屋を経営するAIではありません。
花の鮮度を見極めること。
お客様の気持ちをくみ取ること。
用途に合わせて花を提案すること。
色や形を考え、商品を制作すること。
予想外の出来事に対応すること。
こうした仕事は、これからも人間が中心です。
セーヴァが変えようとしているのは、人間が業務システムを使う方法です。
これまでは、人間が画面の構造を覚え、情報を分解し、決められた場所へ入力していました。
これからは、人間が普段使っている言葉で情報を伝え、セーヴァが業務データへ整理する。
人間がコンピューターの形式に合わせるのではなく、コンピューターの側が人間の言葉を理解する。
この変化が、セーヴァ開発の本質です。
何でもできるAIより、正確に業務へつなぐAI
セーヴァは、まだ完成したシステムではありません。
現在は、スケジュール管理、業務進捗の確認、オーダー入力の簡略化という限られた範囲で、言語理解と情報整理の精度を高めています。
実際の業務で使い、間違いを見つけ、原因を調べ、修正し、もう一度試す。
この繰り返しです。
機能の多さだけを求めれば、もっと多くのことを「できる」と見せることはできます。
しかし、実際の店舗で使用する以上、「ほぼ正しい」では足りません。
日付、時間、件数、金額、注文内容など、間違えてはいけない情報は、実際のデータとルールに基づいて確定させる必要があります。
AIに自由に考えさせるのではなく、AIには言葉の意味を理解させ、正確さが必要な処理は既存システムとコードに担当させる。
その役割分担によって、柔軟さと正確さの両立を目指しています。
セーヴァは、完全対話型のAIではありません。
人間の言葉を理解し、必要な情報を取り出し、業務データへ整理し、既存システムへつなぐためのAIです。
現在は、その最も重要な土台を作っている段階です。
そして将来的には、マルイチがこれまで作ってきた複数の業務システムの上位に位置し、人間の自然な言葉から必要なシステムを利用できる、マルイチ全体の統合的な入口へ成長させたいと考えています。



