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2026/07/20 18:15 ~ なし

新シリーズ【小売業研究所】第一回小売業の未来と価値創造

~これからの花屋が目指すべき未来とは~

まず初めに新たに【小売業研究所】というシリーズのカテゴリで定期的に書いていきたいと思っています。
今日は全体像からプロローグとして簡単に書いていきます。


第一章【プロローグ】

花屋という仕事は、とても素晴らしい仕事です。

季節を届けることができる。

人生の節目に寄り添うことができる。

「ありがとう」や「おめでとう」、そして「お疲れさまでした」という言葉にならない想いを、一輪の花に託して届けることができます。

だからこそ私は、この仕事を未来へ残していかなければならないと思っています。

しかし、その一方で一つの疑問があります。

花屋という業界は、この先20年、30年後も今と同じ仕事の形で成り立つのでしょうか。

人口減少、人手不足、物価高、物流コストの上昇。

私たちを取り巻く環境は、この数十年で大きく変化しました。

それにもかかわらず、花屋という仕事の仕組みは大きく変わっていません。

市場から花を仕入れる。

加工する。

販売する。

納品する。

もちろん、この流れ自体は花屋として最も重要な仕事であり、これからも変わることはありません。

しかし私は、「それだけでは難しい時代が来ているのかもしれない」と考えるようになりました。


小売業は「商品」を売る仕事ではない

私は20代の頃から大手スーパーマーケットでマネジメントや経営について学びました。

売場づくり、利益管理、人材育成、組織運営。

現場で仕事をしながら、企業が成長する理由、そして衰退する理由を数多く見てきました。

その中で最も印象に残っていることがあります。

それは、小売業とは商品を売る仕事ではないということです。

経営学者ピーター・ドラッカーは、「企業の目的は利益ではなく顧客の創造である」と述べています。

利益は目的ではありません。

お客様へ価値を提供し続けた結果として得られるものです。

つまり、小売業とは商品を販売する産業ではなく、価値を創造する産業なのです。

この「価値創造」という考え方は、現在の経営学において最も重要な概念の一つです。

では、価値とは何でしょうか。

品質でしょうか。

価格でしょうか。

もちろん、それも価値です。

しかし、それだけではありません。

小売業の歴史を振り返ると、その答えが見えてきます。


小売業は「価値」を進化させ続けてきた

昔の市場や商店街は、「店主との信頼」を価値としていました。

百貨店・デパートは、「品質」「信用」「品格」という価値を提供しました。

スーパーマーケットは、「必要なものを一か所で、安く、効率よく購入できる」という利便性を生み出しました。

コンビニエンスストアは、「時間」という価値を提供しました。

24時間営業という仕組みは、お客様の生活そのものを変えたと言っても過言ではありません。

さらにディスカウントストアは、「低価格」という価値だけではなく、「商品を探す楽しさ」という新たな体験を提供しました。

そして現在ではECが、時間や場所に縛られない購買体験を実現し、AIは一人ひとりに最適な商品やサービスを提案する時代へと進化しています。

ここで重要なのは、どの業態も「商品」を変えたわけではないということです。

変えてきたのは、お客様へ提供する価値そのものです。

時代が変われば、お客様が求めるものも変わります。

だから小売業は、その時代に合わせて価値を創造し続けてきたのです。


では、花屋はどうでしょうか。

ここで私は、生花業界に目を向けます。

もちろん、この業界にも変化はありました。

インターネットで花が注文できるようになりました。

キャッシュレス決済も普及しました。

SNSを活用した販売も珍しくありません。

しかし、仕事そのものの構造という視点で見ると、大きな変化はあったでしょうか。

市場から花を仕入れ、加工し、販売し、納品する。

この仕事の流れは、何十年も前と大きく変わっていません。

私は、このこと自体を否定しているわけではありません。

花屋の技術は、絶対に残さなければならない文化です。

しかし一方で、小売業全体が価値を進化させ続けてきた歴史を見ると、花屋という業界にもまだ進化できる余地があるのではないかと思うのです。


私たちは「失敗」から学ぶ

経営には「帰納法」と「演繹法」という二つの代表的な思考法があります。

演繹法とは、理論や成功事例から答えを導き出す考え方です。

一方、帰納法とは、多くの事実を観察し、そこから共通する法則を導き出す考え方です。

一般的なビジネス書では、成功事例が数多く紹介されています。

しかし私は、それだけでは十分ではないと思っています。

成功には、その時代の景気や競争環境、偶然の要素が含まれることがあります。

一方で、企業が衰退する理由には共通点があります。

変化への対応が遅れた。

お客様が求める価値を見失った。

業務が複雑になり、本来集中すべき仕事に時間を使えなくなった。

つまり、失敗には再現性があります。

だから私は、成功事例ではなく、失敗事例から学び続けます。

それは過去を否定するためではありません。現在(現状)を否定し続けること。それは未来をより良くするためです。


花屋が提供すべき「価値」とは何か

ここまで「価値」という言葉を何度も使ってきました。

では、花屋がこれから提供すべき価値とは何でしょうか。

私は、それは単に美しい花を販売することではないと考えています。

必要な時に、必要な商品があること。

安心して相談できること。

品質が安定していること。

用途に応じて迷わず選べること。

気軽に立ち寄れること。

そして、「またこの店で買いたい」と思っていただけること。

これらすべてが価値です。

つまり花屋は、「花」を売る仕事ではなく、花を通して豊かな暮らしを提供する仕事なのです。

だからこそ、これからの花屋は技術だけを磨けば良い時代ではありません。

小売業を学び、経営を学び、価値創造という考え方を学び、その上で花屋という仕事へ落とし込んでいく。

それが、これからの花屋に求められる新しい姿ではないでしょうか。


おわりに

私は、この答えをすべて持っているわけではありません。

だからこそ、これからも学び続けたいと思っています。

花屋だけを見ていても見えないことがあります。

小売業全体を学ぶことで見えてくるものがあります。

そして、その学びを花屋という仕事に置き換え、一つひとつ実践しながら、未来の花屋の姿を考え続けていきたいと思っています。

この「小売業研究」は、単なる店舗ブログではありません。

私自身が現場で学び、考え、失敗し、改善を繰り返す中で得た知識や経験を、小売業という視点から整理し、生花業界へ還元していくための研究記録です。

業界には、まだまだ変えられることがあります。

残すべき技術もあります。

進化させるべき仕組みもあります。

そして何より、お客様へ提供できる価値には、まだまだ大きな可能性が残されていると私は信じています。

これからも、このシリーズでは「花屋」という枠にとらわれることなく、小売業・経営・マーケティング・価値創造など、さまざまな視点から「これからの花屋」について考えていきたいと思います。

このシリーズは小売業全体を考えることをテーマにした内容です。一般的には面白い内容ではありませんが記録として残していければと考えています。

次回以降もこういったカテゴリの記事を数回に分けて書いていきたいと思っております。